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艸砦庵だより

河村正之のページ 絵画・美術、本、山、旅、etc・・・

通り矢尾根から三室山を越えて青梅・吉野街道に友人の個展を見に行った。(2015.12.6)

 

 古い知り合いの、30代の予備校講師時代の同僚だったS君から個展の案内状が届いた。場所はと見れば、青梅の吉野街道沿い、uoriというギャラリー。ずいぶん辺鄙なところで、と思う。会期は12月6日から20日までの土日のみ、5日間とこれまた妙にイレギュラーな会期である。

 彼との付き合いでは、最近までの20年ほど空白期間があったため、その作品を見たことがまだなかった。案内状の作品図版はなかなか良さそうな絵だ。これは行かずばなるまいとは思うものの、場所的に少々面倒くさい(失礼)。ドライブがてら女房と車でとも思ったが、展覧会前で忙しそう。とりあえず場所はと、地図を眺めているうちに、通り矢尾根のすぐ先であることに気づいた。

 通り矢尾根は、御岳山から東に延びる尾根が日の出山で二つに分かれ、東北東の三室山から南東に向きをかえ、肝要峠をへて日の出町萱窪まで伸びる稜線のうち、三室山から萱窪までの間を言う。以前、その末端部分をほんの少しだけ、散歩として歩いたことがある。登山ルートとしては二三のガイドブックや「新ハイキング」などに取り上げられているのを見たことがあるが、要するにマイナーな里山ルートである。ほんの少し気にはなるが、さりとて気合いを入れて計画するようなところでもない。このままいけば行かずじまいで終わる可能性が高い。そう思うと、これも縁だろうと、個展を見に行くために山歩きをしてみる気になった。妙な理由だが、こういうこともある。

 短いルートなので、無理に早起きする必要はない。ブランチ後、女房に車で送ってもらう。梅ヶ谷峠への途中、水口集落で降ろしてもらい、歩きはじめる。数軒の人家が終り、古い馬頭観音を右に見て進めば、あっというまで出発点の小さな峠、楢山路峠(馬坂峠)である。

  ↓ 最奥の人家の先に進む。

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  ↓ 峠手前にたたずむ馬頭観音。年記は読めず。

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  ↓ ちんまりとした楢山路峠峠を見上げる

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 何年か前の散歩のおりは萱窪から歩き、ここまで来て、反対側の岩井に降りたのだ。手前には手持ちの2.5万図(平成2年発行:現地調査平成元年)には出ていない、田の入林道(岩井―長井)と記された林道が走っている。この林道は尾根と並行し、終始見え隠れしながら二三か所で尾根を乗り越え、上部で別の林道と合流し、ずっと先まで延びているようだった。帰宅後「地理院地図」のサイトで見てみたら、この25年で驚くほど多くの林道が延びているのがわかり、驚く。もしそのことを事前に知っていたら、歩く価値なしと判断して、おそらく行かなかったのではないかと思う。林道のことはともかくとしても、やはり地図は新しい方が良い。

 峠から尾根に乗る取り付きは急だったが、すぐになだらかな尾根上に出る。そこからはいかにも里山といった風情の踏み跡が続く。杉檜の植林帯を主とした中に常緑の広葉樹がまじり、ときおり色づいた落葉樹が点在する。小楢などは黄葉の盛りだ。

  ↓ こんな感じ

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 登り始めの楢山路峠から三室山をへて下山するまでの全工程、2.5万図には一切の地名が記されていない。またルート中に登山用の標識等は全くといっていいほど無いため(林道関係の表示はある)、現在地の把握が難しい。さらに里山ゆえの仕事道があちこちに通じているが、基本的に主稜線を辿れば問題はない。林道の存在もあまり気にならない。結果として、コース全体を通して微妙な変化があり、意外に面白い。むろん、しみじみとした、渋い面白さではあるが。

 細尾山457mとおぼしきピークには山名の標識はなく、山の神の祠が一つ少し傾いて佇んでいた。途中尾根を林道が横切っているところでは登山者のことなど一切顧慮されず、古い山路は寸断され、向こう側とのつながりがわからなくなっている。落ち着いて良く見ればすぐに見いだせるが。

  ↓ たぶん細尾山山頂

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 肝要峠(間坂-まさか-峠との手書きの表示あり)にも林道が通じていた。その後も左手、木の間越しに見える馬頭刈尾根やスルギ尾根、またところどころに点綴された黄葉を愛でながら、三室山646.9mに着いた。御岳方面は暗い植林帯、琴平神社方面は色づいた広葉樹の林となっている。

  ↓ 三室山山頂。ザックが寄りかかっているのは三等三角点

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  ↓ 山頂から琴平神社方面への尾根を見る。f:id:sosaian:20151207231528j:plain

 三室山は別名マルドッケとも言う。ドッケ(トッケ)は朝鮮起源の地名。三つ峠をはじめとして甲武相にはあちこちに見出すことができる。マル、モリもまた朝鮮起源である場合もあるが、このマルドッケの場合は形体的な「丸」で良いと思う。(参考『日本山岳伝承の謎』『「モリ」地名と金属伝承』谷有二 共に未来社

 琴平神社に向かう道は、通り矢尾根のそれに比べれば、まさにマイナールートとメインストリートの違いがある。琴平神社には大正三年の年記の記された、弁慶と牛若丸の絵馬というか額が奉納されていた。絵具の剥落した部分もあるが、ちょっと変わった味の絵馬である。そこから40分ほどで車の行きかう吉野街道に出た。

 ↓ 琴平神社に奉納されていた絵馬。暗いときのピント合わせのやり方がわからなくてう まく撮れない。

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 20分ほど歩き、ようやく今日の目的地(?)uoriに着いた。初めて見るS君の作品は混合技法で描かれた、小品ばかりだが、なかなか良い作品であった。そして当然のようにして一杯二杯とささやかに宴会は盛り上がったのだった。 

                         (記 2015.12.7)

 ↓ S君の個展のDM。20日までやってます。

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コースタイム】水口12:00~楢山路峠(馬坂峠)12:25~細尾山(?)457m13:33~肝要峠(間坂峠)14:10~三室山15:15~琴平神社15:40~吉野街道14:20