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艸砦庵だより

河村正之のページ 絵画・美術、本、山、旅、etc・・・

晩秋の大羽根山からトヤド浅間へ (2016.11.18)

 それにしても、なぜ?と思う。わが悪癖、遅寝遅起きという生活習慣についてである。いや、それはその理由や問題点などすべてわかっているのだが、それがなぜ海外や旅先になると全く解消して問題なく早寝早起き体制に移行できるのかということである。

 海外でのそれは、時差の関係だと考えればわかる。つまり私の身体は海外時間で設定されているのだと。しかし、これが先日行った九州・山口の場合となると理解できない。5泊6日、毎晩9時前後には寝て、翌朝5時でも7時でも平気で起き出せるのだ。それが帰宅すると、あっという間に未明4時就寝11時起床に後戻り。と、まあ、結局は個人的意志的問題にすぎないということなのだが、いざ山に行こうという時には困る。寝酒の勢いを借りた4~5時間の浅い眠りで、重い頭を抱えて登る。途中の休憩で10~30分くらい寝入ることもある。それでも日の長い時期はまだ良い。寒く日の短い晩秋から冬にかけてはそうはいかない。行動時間やルート設定もおのずから限られてくる。ゆえに遠くの山には行き辛い。しかし山には行きたい。もうこうなれば近場でもどこでもいいのだという心境になる。

 その結果、思いついたのが、今回の大羽根山からトヤド浅間。登山口まで、わが家から駅まで歩き20分、そこから登山口までバスで約1時間、計1時間半。行き慣れた山域であり、近い。バスは7:19の次が8時台はなく、9:00発。これなら何とかなる。大羽根山もトヤド浅間も主稜線からはずれた支脈上に位置し、おそらくそれを目的に登る人はきわめて少ない。以前からその存在を知ってはいたが、私の「今年登る山」リストにも「いずれは登りたい山」リストにも記載しておらず、おそらく一生登らない可能性の方が高い山である。この二つを結ぶ笹尾根は奥多摩の中でもポピュラーなルートであり、私も二度に分けて全部歩いている。山域やルートに不足はあるが、まずは登ることを優先とする。標高差600m、歩程5~6時間、晩秋、快晴と、手頃なコースだろう。

 

 例によって5時間睡眠で満員のバスに乗る。座れない。乗客の9割が(中)高年の登山者。平均年齢60代後半か。

 バス亭浅間尾根登山口で下車。同時に降りた10余名はみな浅間嶺へ向かう。対岸の大羽根山へ向かうのは私一人。登山口には「中央区の森」の看板があり、見れば手すりと木の階段の幅広い道が尾根の上に続いている。そんなところを行くのはいやなので、すぐ左に分岐する道の方に入るが、すぐ先で合流し、結局は同じ道を行くこととなった。道は時々錯綜するところもあるが、特に問題はなく、歩きやすく、まあ快適である。

 ↓ こんな感じ

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 登り始めは植林帯だったが、すぐに広葉樹林帯も出てきて、以後広葉樹と植林帯の針葉樹がモザイク状に交錯する。晩秋特有の水色の空と中腹の黄(紅)葉した広葉樹の組み合わせは、見知ってはいても、やはり美しい。途中に炭焼き窯とヌタ場がある。また三頭山方面がよく見えるところがあった。

 ↓ 三頭山方面

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 一度休憩したそのすぐ先が大羽根山992m。ベンチがあり、先行のおばさま4名がいた。大羽根山自体は山頂らしからぬ尾根上の出っ張り。背後は植林帯が迫っているが、北側が伐採されて、浅間尾根とその先に御前山が大きく鎮座しているのに向かい合える。

 ↓ 大羽根山山頂

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 ↓ 大羽根山山頂から見る御前山 手前は浅間尾根

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 そこから30分ほどで笹尾根主脈と合流する。笹尾根は名前の通りかつては草原状の見晴らしの良い尾根で、富士を望む尾根であったようだが、現在では植林、広葉樹共に繁茂し、見晴らしはあまり良くない。

 ほどなく笛吹峠(大日峠)に着く。「大日」の文字を彫った道しるべがある。

 

 ↓ 大日峠(笛吹峠)の道しるべ 優美な書体 石全体の形も大日の見立てか

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 ここに限らず笹尾根上の峠は全て、かつての檜原村山梨県上野原方面との交易・生活の路である。谷沿いに本宿や五日市方面に出るよりも、山越え峠越えルートの方が安全で早かったのだ。したがって峠の名には檜原または上野原いずれかの、時には両方の地名が冠せられるので、笛吹(うずしき)峠はわかるが、大日峠となるとどうなのだろう。大日は大日如来のことであろう。仏教の中でも最上位に位置づけられる仏で、特に密教では最高仏とされている。また密教と関連付けられる山岳信仰の面では、富士山の本尊とされ、富士の神とされる浅間大神本地仏である浅間大菩薩ともされた。神仏習合の解釈では天照大神とも同一視されるとの由。それ以上詳しいことはわからないが、そうしたことから富士の良く見える笹尾根にあって、その大日と彫られた道しるべが置かれたということなのだろう。「みぎハかづま(数馬) ひたりさい○ら(西原 ○は異体字の〈は〉)」と散らし書き風に、なかなか優雅な味のある書体で彫りこまれている。

 

 丸山1098.3mの山頂は、三頭山側から来ると縦走路からちょっと外れた位置にあり、つい見落としがちである。前回踏んだかどうか記憶にないので、ちょっと寄り道してみる。三角点はあるが、特にどうということのない一地点。

 

 ↓ 丸山山頂

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  ↓ 落葉のパターン

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 ↓ 丸山~土俵岳の間

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 ゆるやかな起伏の植林帯、広葉樹林と歩けば小棡峠をへて、やがて土俵岳1005.2m。ここも山頂らしからぬところだが、やはり伐採された北面の展望は良い。三頭山、御前山、大岳山といわゆる奥多摩三山が一望できる。手前の落葉松の黄褐色が良い添景となっている。

 

 ↓ 土俵岳山頂

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 ↓ 土俵岳山頂からの左御前山、右大岳山

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 ↓ 土俵岳から浅間峠の間

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 さらに日原峠をへて浅間峠へは、広葉樹の割合も多く、気持が良い。今回いくつも通過した峠の中で、この浅間峠が最も大きく、東屋もある。

 

 ↓ 浅間峠の手前

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 ↓ 浅間峠

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 少憩ののち、峠から檜原上川乗方面への路に入る。すぐに右にトヤド浅間への尾根に乗る。踏み跡は思ったよりも薄いが、尾根上を辿ればよいので、慎重に行けば問題はない。

 

↓ トヤド浅間に向かう

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815mピークを越えた先の頂上831mは小広く、植林、広葉樹半々で展望はないが、それなりに頂上らしい雰囲気はある。古い手書きの山名表示板には「ズンガリ」とも書かれていた。その意味はわからない。トヤドは「鳥屋戸」で、かつてこのあたりで小鳥を捕まえるカスミ網などを仕掛けたところなのではないか。三角点のすぐそばには小さな祠がある。たぶんこれは浅間神社であろう。

 

 ↓ トヤド浅間山頂 この右前方に祠がある

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 さて下りである。その祠のところからごく自然に進みだす。ほんの10mも進んだところで何か引っかかるものがある。この方向で本当に良いのか?トヤド浅間のエリアに入ってからの踏み跡の薄さからすれば、この下りは要注意である。一ヶ月前の達沢山・中尾根での失敗が頭をよぎる。今回は慎重に2.5万図を片手にコンパスを振る。何と、目指す方向と45度ぐらいずれている。危ないところであった。いまさらながら、2.5万図とコンパスは必携であり、その使用は必須であると再認識。やれやれ。

 

 ↓ 下りの途中の伐採地から見る浅間尾根

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 古い赤テープが頼りの下りは、薄いながらも踏み跡はなんとか辿れる。やがて伐採地に出て一安心する。ところがその先でまた怪しくなる。山と高原地図では尾根の最下部で破線が二つに分かれるのだが、まだその手前と思われるあたりで左からのしっかりした作業道が合流してくる。これかなとも思って辿って見るが、それは登っていくようだ。やむをえず、そのまま尾根上を下降する薄い踏み跡を辿る。

 もう右手に民家の屋根が見え、岩まじりの痩せ尾根状になるあたりになると、タラの木やクマ苺などのトゲトゲの植物に行くてをはばまれる。左側に逃げようと試みるが、踏み跡は見いだせず、やむなく痩せ尾根に戻り、直進する。尾根上にはいくつかの人工物が設置されており、まあこれはこれで間違ってはいないはずなのだが、最後の小ピークから先がわからない。眼下には車の走る道路。踏み跡を左に辿ると、どうにもヤバそうな崖。二度三度と右往左往したあげく、最後の小ピークまでもどり、覚悟を決めて右前方に下る。最後に道路の法面の上に出るのを警戒したのだが、あっさりと法面からの通路に出ることができた。そこは京岳バス亭の少し先であった。15分ほどでやってきた満員のバスに乗る。結局トヤド浅間からの下りが今回の山行の核心部であった。

 

付記①

 全体を通じて意外と足が疲れた。前回の山行から9日たっているから疲れが残っているわけではなく、ちょっと不思議だった。途中で気づいたのだが、そういえば前回はサポートタイツをはいていたのだった。8月の燕~槍で初めてはいていたのだが、その締め付けられる感じというか、違和感があり、また実際どれほどの効果があるのか、今一つ実感できず、好感がもてず、今回は難度も低いことから着用しなかったのである。しかし今回の疲労感からすれば、やはり一定以上の効果はあるのだろうと認めざるをえない。一日たっても筋肉痛と言うほどではないが、疲れは残っている。複雑な心境である。それは一種の人工登攀ではないか。しかし、今後どうしよう。

 

付記②

 (中)高年登山者(私もその一人)が多いのは仕方ない、悪いことではないとして、マナーが悪いというか、例えば「すれ違う時は登り優先」という最低限のルールを知らない人と山中で行きかうと、やはり少し不愉快になる。

 また満員バスで、生活の足として使っているであろう地元のお年寄りが立っているのに、シルバーシートに座った中年の人(そのお年寄りよりは明らかに若い)が席を譲らないのは見ていて不愉快である。それを指摘できない私も情けないが。

(記:2016.11.18)

 

【コースタイム】2016.11.18(金) 快晴

浅間尾根登山口バス停10:05~大羽根山11:10~笹尾根11:40~笛吹峠(大日峠)12:00~丸山12:20~土俵岳1005.2m13:20~日原峠13:40~浅間峠14:20トヤド浅間15:10~京岳バス亭16:15