艸砦庵だより

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四国の山旅―その3 三嶺 (2018.4.27)

4月27日(金)晴時々曇り

 

 朝食後、通いなれた(?)道を名頃の登山口の駐車場へ。数台の車が停まっている。8:25カカシ達に見送られて登り始める。

 

 ↓ お見送りのカカシ(?)たち

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 剣山からの往復に比べれば、この尾根から三嶺に登る人は少ないようで、その分いっそう足の裏にしっとりとくる快適な登山道である。芽吹きからようやく新緑へといった感じの、なだらかで明るい樹林の尾根筋。下草はほとんどなく、時期がまだ早いのかと思う。熊の爪痕や、ところどころの木の幹や根に鹿の齧った跡があった。

 

 ↓ 芽吹きの尾根を行く

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 しかし下山後に宿に備え付けてあった『シカと日本の森林』(依光良三 築地書館)をパラパラと見たり、宿の人の話を聞いてみると、下草がないのはどうも鹿の食害によるものらしい。今回五日間のうち三日、四回鹿を見かけているから、鹿の生息密度はやはりそうとうに高い。それが人工林密度の高い徳島県でわずかに残っている剣山・三嶺周辺の自然林に集中しているらしい。キレンゲショウマどころか、トリカブト以外の下草をほとんど見かけなかったのも、そういうことなのか。考えてみれば、悩ましいことである。

 

 ↓ 少し尾根の狭まるところもあった

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 尾根を横切っている林道を越えると(9:05)、そこにだけ何本かのミツバツツジ(?)があでやかな花をつけている。

 

 ↓ ミツバツツジ(たぶん)

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 ↓ ダケモミの丘手前の針葉樹林帯

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 その上の針葉樹林帯を少し登れば1517mのダケモミの丘(10:08)。さらに少しばかりの急登とゆるやかな登りの後、頂上直下の急登になる。

 

 ↓ 笹原の中のガレ場の登高

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 笹の中のガレ場を登れば、頭上に頂稜の岩壁帯がのしかかってくる。

 

 ↓ 頂稜直下の岩壁帯

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 ↓ 岩壁帯基部のトラバース

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 その基部をトラバースして最後の急登を登り切れば、池の脇にポンと飛び出た。池の名前は知らなかったが、帰宅後調べてみると「龍神さんの池」というらしい。悪くもないが、もう少しふさわしい名前がありそうな気もするが…。

 

 ↓ 龍神さんの池に飛び出した

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 ともあれ、気持ちの良い一帯である。生えているのは、ミヤマクマザサ以外はコメツツジだけ。ただし花も蕾もまだ早く、今のところは味気ないだけだ。

 

 ↓ 三嶺山頂へ

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 頂上はそこから一投足だった(11:35)。比較的狭い三嶺山頂は、ここも360度の展望。昨日の剣山はおろか遠く石鎚山系まで見える。西に延びる縦走路が魅力的だ。後から何人かの人が登ってきたが、しばらくは我々だけの静かな山頂で展望を堪能する。

 

 ↓ 頂上三角点

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 ↓ ハッピーな二人

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 ↓ 昨日登った剣山方面遠望

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 ↓ 西に続く魅力的な縦走路

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 宿の弁当の昼食後、下山にうつる。帰りがけの駄賃に頂上ヒュッテのトイレに寄る。そこから振り返って見れば、笹原の先に三嶺の頂上が、ぽこんと可愛らしい頭を突き出していた。

 

 ↓ 三嶺ヒュッテと池

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 ↓ 三嶺山頂を振り返る

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 下山ルートとしては、登りと同じところを下るのはあまり面白くないというか、できれば違うルートから降りたいもの。今回でいえば登った尾根の右手の沢の対岸の尾根あたりに道があれば好都合だったのだが、ない。車の都合などからも、いかんともしようがないと思い込んでいたので、特に考えることもなくそのまま下った。しかし帰宅後地図を見ると、頂上から北に「いやしの温泉郷」に向かって登山道が記載されていた。実は下山後、ある必要があってその「いやしの温泉郷」に行くことになっていたのだ。「いやしの温泉郷」から名頃の駐車場まで歩いて1時間少々といったところだから、そこを下るという選択肢もありえたのだが、後の祭である。

 まあ同ルートピストンというのも、必ずしも悪いものではない。一度通ったところを視点をかえて落ち着いて観察できるし、安心感もある、といったことをどこかで書いていたのは池内紀だったか。それはその通りで、久しぶりの「同ルート下降」を味わいつつ降りる。

 

 ↓ 久しぶりの「同ルート下降」を味わいつつ降りる

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 途中一頭の鹿に遭遇。いったん走り去ったあと、遠くに立ち止まってこちらを見ている。何とかズームで撮影できたが、見ると腹部に妙な瘤というか、浮き出しがある。寄生虫?かとも思うが、正確にはわからない。

 

 ↓ 腹部の瘤というか浮き出しは何?

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 再びのミツバツツジの美しさを味わい、ほどなく駐車場に到着。

 

 ↓ 再びのミツバツツジ

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 それなりに変化のあるルートと山行内容、好展望を楽しめた充実した山行を終えた。

 

 その後、上述の「いやしの温泉郷」に行く。これは吾々が泊まっていたラフォーレつるぎ山に同宿していたシンガポールからの姉妹が、その前に泊まった「いやしの温泉郷」の部屋の鍵を誤って返却しそこなって困っていたのを、預かって返すためである。むろん温泉に入るのは当初の予定のうち。事前に連絡しておいたせいか、入浴料タダ、お土産付きで感謝され、かえって恐縮してしまう。ラフォーレつるぎ山にも当然風呂(徳島県で一番標高の高いところにあるという風呂)はあり、そちらも申し分のない風呂ではあるが、温泉ではない。必ずしも温泉にこだわるわけではないが、入ってみればやはり格別である。

 

 ラフォーレつるぎ山に戻ると、目の前の夫婦池畔に何頭かの鹿がやってきた。ただ見ている旅行者にとっては可愛い存在だが、地元の人からすれば「悪さばかりしよる」ということなのだろう。悩ましいことである。

 

 ↓ 夫婦沼に降りてきた鹿の群 ラフォーレつるぎ山よりズーム

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 ↓ 途中で見かけたオブジェというか樹肌の形象

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【コースタイム】4月27日(金)晴時々曇り

名頃登山口駐車場8:25~林道9:05~ダケモミの丘10:08~三嶺山頂1893.6m11:35/12:30~ダケモミの丘13:50~名頃登山口駐車場14:53

 

 

4月28日(土)晴

 入山日こそ雨にたたられたが、それ以外は(霧もふくめて)好天に恵まれ、三日で五つの山頂に立つことができた。連休前という選択も正解であった。大いに楽しんだ剣山・三嶺山系を離れ、帰宅の途につく。

 貞光川沿いの細いくねくねした道も、二度目となればさほどの不安はない。下がるほどに輝きと濃密さを増す新緑を愛で、藤の紫を愛でつつ走る。坂出で豪快素朴なうどんを味わい、瀬戸内中央道のパーキングで光あふれる海景を味わう。

 

 ↓ 瀬戸内海と飯野山(讃岐富士)その他

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 昼過ぎ、新倉敷駅でパーティーは解散。それぞれの帰途についた。次は七月の北海道だ。

                              (記:2018.5.2)