艸砦庵だより

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山行記 -7 グランドキャニオンのブライド・エンジェル・トレイルを歩いた (ちょっとトレイルランについても考えてみた) (2015.9.20)

 

9月20日(6日目) 

 グランドキャニオンのブライド・エンジェル・トレイルを歩いた。

 このルートはグランドキャニオンの真ん中というか、ある程度核心に触れる長めのルートを歩きたいという私の希望であるとともに、ここに何度も来ていながらそのたびに家族連れゆえにトレイル歩きが叶わなかったKの希望でもあった。さすがお互い、高校山岳部同期。

 トレイルヘッドから谷底まで降りてコロラド川を渡り、対岸のノースリムまで行けば最高だろうが、標高差も大きく、途中一泊を要するハードなコースとなる。今回は下部河岸段丘のインディアン・プラトーまでの往復。標高差は約1000mで技術的な困難はないが、7~9時間のそれなりのコース。

 ↓トレイルヘッドから見たトレイル全景 中央奥の台地の先端がプラトーポイント

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 普通山歩きは登ってから降りるのだが、今回は下ってから登り返すことになる。最初は気温もまだ上がらず、大岩壁のかたわら、全て絶景の中を快適に九十九折りに下る。このトレイルを歩く人もけっこう多い。乗馬部隊もいる。

 ↓ 途中の大岩壁 登られているのだろうか

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 このブライド・エンジェル・トレイルはそれなりに由緒と歴史ののあるトレイルのようだが、ここに限らず、トレイルというのは、日本で言う登山道というよりも、遊歩道とでも言うべき路で、幅は2~3メートルぐらい。全体としておおらかな地形の中を、ひたすら一定のゆるやかな勾配で作られている。また雨の極めて少ない気候のため、路の崩壊などもごく少なそうだ。そのため体力面をのぞけば老若男女誰でも楽しむことができるというコンセプトのようだ。体力面に関しては完全に自己責任という考え方である。ここやヨセミテの他のトレイルを何本か歩いてみて、そう確信した。

 そのような路であれば確かに「走る」ことについても、さほど無理はない。すなわちトレイルランである。かえりみて日本の全体として痩せた急勾配の山容の中を走るというのは、どだい無理がある。旧建設省基準では山道は2メートル幅となっていたようだが、今はどうなのだろうか。もしこうしたアメリカ的トレイルランのコースを日本で設定するとしたら、霧ヶ峯や美ケ原、北八ツといったなだらかな山容の山に幅2~3メートルの道を作ることになるが、いかがなものだろう。日本の山にはやはり、消え入りそうな、かそけき踏跡こそが似つかわしく、美しいと、私は思うのだが。

 途中2か所の休憩所・水場を経て、乾ききった路はやがてインディアンバレーと呼ばれる谷間に至る。清冽な渓流が流れ、大木が生え、鹿が遊んでいる。そこから一投足で目的地のインディナンプラトーポイントに到着した。周囲を雄大なこの上ない岩壁やら、残丘やら、シヴァ・ピ-クとかブラフマン・ピークなどと名付けられたピークやらに囲まれ、眼下に物憂く淀むコロラド川を見下ろす素晴らしい場所だ。上のビューポイントから見ているだけでは決して目にすることのできない、例えようもない美しさ。ここも「世界の果て」の一つなのだ。大満足である。

 ↓ インディアンバレー ここは別天地

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 ↓ 前方の台地がインディアンプラトー その最先端にプラトーポイントがある

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 ↓ 奥の人が立っている所がインディアン・プラトーポイント

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 ↓ 右がシヴァ・ピーク 左がブラフマ・ピーク なぜヒンドゥーの神?

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 ↓ コロラド川

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 さて帰途が本日の核心部である。同じ路の往復なのだが、時間とともに気温が上がり、強烈な日差しにじりじりと日焼けしていくのがわかる。こまめに水分補給するが、汗は皮膚から直接蒸発し、小便も出ない。たまにある日陰に入ると生き返る思いがする。ゆるやかな登りが延々と続き、暑さと乾燥で次第にヘロヘロになっていった。これまでの疲れもあるのか、最後の方は本当に時々意識が飛びかけた。足もつりそうになり、一時は本当に限界を感じた。

 ↓ 暑さと糖尿病の低血糖で意識の飛びそうなK氏 私も同様

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 ともあれ目的は達成した。来て良かった。ロッジに帰って飲んだビールの美味かったこと!

コースタイム】ブライド・エンジェル・トレイルヘッド7:35~インディアン・プラトー・ポイント10:35-55~トレイルヘッド15:20