艸砦庵だより

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『週刊女性』に(ちょっとだけ)名前が出た~古い一枚の写真から

 昨年末というか年明けごろから体調が芳しくない。

 一つは、あるいは高血圧?。長く血圧優等生だったのに、ここにきて110前後~140前後といった数値が出る。毎日ダルさと(実際には熱はないのに)微熱状態といった態。

 もう一つは六十肩(のバリエーション?)というか、右腕に力が入らず(平時の六割ぐらいか)、ある範囲以外うまく動かない。顔を洗うのにも、風呂で体を洗うのにも少し不自由だが、何より絵を描くのに不自由する。特に今は今年2回予定している個展のために150号の大作に取りかかっているのだが、腕を上にあげて筆を使うということがうまくできないのである。大作が描き進められない。やむなく小さな作品を抱え込むようにして描いているが、精神的にまことによろしくない。

 そんなわけで、当然山歩きなど行きようもない。いや、無理をしてでも一発行けばスッキリするような気がしないでもないが、いやな予感がして、自重している。せいぜい1時間半ほどの裏山歩きをたまにするぐらいのものである。

 気晴らしにブログ書きでもすればよいのかもしれないが、キーボードを打つのも少し辛い。書くべきコンテンツはあり、ある程度の下書きはしてあるのだが、集中するのがちょっと辛く、アップするには至っていない。

 しかしまあ、そんな愚痴ばっかり垂れていても仕方ないし、たまたま古い友人からの一通のメールからちょっとした珍しい(?)体験をしたので、素材の賞味期限が切れないうちに、ちょっと書いてみようと思った。これならば労力もさほど必要としないだろうし、考察も分析も必要ない、近況報告として。

 

 以上、前書き、以下本論。

 

 

 年が明けて10日ほどしたころ、Aからメールがきた。

 ええい、めんどくさい。Aとは秋元、現東京藝術大学大学美術館館長兼練馬区立美術館館長の秋元雄史である。ついでに言えば金沢21世紀美術館の元館長であり、直島の地中美術館の元館長でもある。

 本ブログでは個人的な交友関係の範疇の話題の場合は、一般常識にしたがって、原則個人名は出さず、AとかB氏とか仮名にしている。しかし、本人の実名をもって公表されたものや、ある程度公的な話題については実名をあげる。そうしないと話が見えないからである。そもそも、今回は画像を見ればわかるように実名、写真入りの記事なので、秋元雄史の名で話を進めるしかないのである。

 

 秋元からのメールは、今度『週刊女性』に取り上げられるので、「昔を知る友人」として、つまり裏付けインタビューに協力してほしいとのことであった。はあ?『週刊女性』?か。まったく縁のない世界であるが、まあ頼まれたからには協力してあげましょうか、といったところ。

 前後して奈良在住のFから画像が届いた。同様に秋元に頼まれて誌上に掲載する、学生時代の写真を提供したのだが、そこに写っている人物の真ん中の一人がどうしてもわからないという。

 

 ↓ 後ろのザック姿が私 一番右秋元 真ん中の男は誰だ?

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 1977年、大学2年の五月、私がまだ山岳部に在籍していた頃、唐松岳~不帰の新人歓迎合宿終了後、鹿島槍の麓の山岳部の山小屋に移動して定例の小屋整備を終え、さらに居残って先輩と二人で鹿島槍のバリエーションルート、荒沢尾根を登りに行ったものの、初日の渡渉に失敗し流されずぶ濡れになるやら、出直した翌日は取り付いてほどなく大滑落し、九死に一生を得てほうほうの態で敗退した日に、事前に約束していた通り、友人やら何やらが十名ほどやってきたのである。その写真は山小屋でさらに数日過ごした帰途の大糸線の駅で撮ったものだ。この写真には写っていないが、もうニ三人いた。

 

 メンバーは学年も大学も違ったり、友人やら知り合いやら雑多な集団なので、全員を見知っている者はいなかった。おおらかなものである。そういえばこの年の新人歓迎合宿自体は、例年の鹿島槍大冷沢定着が、雪庇の状態が悪く、場所を八方尾根に変更したこともあって、合宿自体は短かったにもかかわらず、家を出てから帰るまで二週間以上。当然授業はあったのだろうが、まったく気にしていない。思えばのんびりしたものであった。

 その写真は秋元自身がフェイスブックにあげ、それに反応した何人もの人から「真ん中の人物は誰?」という話題でひとしきり盛り上がっていた(私自身はフェイスブックをやっていないので、女房経由)。まあ、40年前の写真だからねえ。どうやらその人物を知っているのは私だけらしい。

 

 ↓ もう一枚 やはりボツ写真 真ん中の男は誰だ?

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  問題の彼とは、私と同郷の、高校山岳部の後輩の、当時立教大生のTのことであった。高校では2学年下だが、私は3浪し、彼は現役合格だったせいで、この時は1学年上の3年生だったはずだ。芸大は浪人生の方が圧倒的に多かったので、そういうことはしばしばあり、年下の先輩なども普通に存在していた。

 ちなみに秋元と私は一歳違い(とは言っても数か月違いでしかないのだが)、大学入学は同期だが、彼は二年留年したせいで、学部卒業は私の修士課程修了と同じ年。写真を提供したFは私と同年齢だが、大学は私たちより二年早く入った。一緒に写っている現某芸大教授のS君はFより1学年下、私より1学年上だが、確か5浪か6浪しているからこの中では最長老か。結局大学には入らなかったIも、この写真には写っていないKも同じ3浪だが、確か高校入学前後に1年余分にかかっていたはず。ああ、ややこしい。

 なぜ彼が参加しているのかわからないが、私が声をかけたのだろうか。あるいは、やはりその写真に写っている、予備校で1年間一緒だった2学年下の、やはり立教大学生の(別の)K(大学生のくせに昼間の予備校に通っていた)と同じ大学サークルだったという縁で来たのか。まあ、いつでもどこでも顔を出すやつではあったが。しかもなぜかいつも真ん中に写っている。

 ともあれ、真ん中の人物の正体は判明したが、秋元のフェイスブックを共有するメンバーとは縁のない世界の人なので、フェイスブックの話題としてはそこでお終いである。

 

 そのTは大学卒業後しばらく旅人をやったのち、郷里に帰り、家業の運送会社を継ぎ、今はコンサルタントなんぞをたまにやりつつ、チャリダー兼旅人として復活しつつあるようだ。私とは長く縁が切れていたが、ここニ三年また淡い関係が復活しているようでもある。

 

 さて、『週刊女性』である。

  

 ↓ 『週刊女性』2月12日号(1月29日発売) 表紙に「人間ドキュメント」や秋元雄史の文字はない

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 ライターから電話がかかってきた。電話インタビューかよ、と一瞬思ったが、さすがに手際は良い。美術関係者ではないから若干ポイントを外すところはあるが、全体としてはツボを押さえた取材であり、必要とするところをうまく引き出していく。プロである。数日後、私の「談」の部分の文案が送られてきた。あらためて二三の修正点を指示する。

 

 ↓ 私の関与した部分 その1

 

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 ↓ 私の関与した部分 その2

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 私はこれまで何回かのテレビやラジオの取材を受けてきたが、普通その録画等は送ってくれない。社内規定があるようでもあるが、取材された方としては釈然としない。今回は掲載誌を送ってくれと言ってみたら、発行日にちゃんと送ってくれた。えらい。それが画像の『週刊女性』2月12日号(1月29日発売)である。

 残念ながら表紙に「人間ドキュメント」や秋元雄史の名前は出ていない。

 

 しかし、内容はしっかりしたもので、わかりやすい読みやすいにもかかわらず、それなりに読みごたえもある。他の記事に関してはノーコメントというしかない。あまりにも私の関心外の世界なので。

 それにしても秋元が、女性週刊誌といった、およそ芸術とは縁のなさそうな雑誌にでも出るというのはちょっと驚きというか、意外でもあった。もちろんそこにはそれなりの理由があるのだろうし、内容からすれば、決して悪いことではない。

 私としては、おかげで(?)まったく縁のない世界に一瞬ふれることができたということである。

 

 ↓ 記事の全体 その1 これでは内容は読めないので無断転載にはならないはず。

   関係ないけど相変わらずスーツの似合わないやつだ。

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 ↓ 記事の全体 その2

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 ↓ 記事の全体 その3

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 残念ながらTの写っている写真は画質が悪すぎて誌面には載せられないとのことで、ボツとなった。少し残念である。ほんの少し、ごく一部のフェイスブックににぎわしただけで日の目を見ることなく終わってしまうことの個人的な残念さゆえに、この写真を再録するために、この一文を書いたようなものである。ちょっとした話題提供、近況報告でもあるが。

 それにしても、多少ピンボケでも写真を直接高画質でスキャンして送れば、それなりに載せることは可能だったのではないか。ピンボケではあるが、雰囲気のある良い写真だと思うのだけれども…。

                            (記:2019.2.3)