個展「耀ふ静謐」 レポート―4
これまでどちらかと言えば、デーハな(?)作品の紹介が多かったので、今回は少し地味めなものを紹介します。
↓ 736「アララット―いにしえの光」
(41.8×59.2㎝ 2016~2018年 版画用 和紙/アクリル・彩墨)
(41.8×59.2㎝ 2016~2018年 版画用

アララット山は、現在はアルメニアとの国境に近いトルコ
キリスト教徒アルメニア人の心の山であるが、その山麓で
数年前にアルメニアを旅した時、その優美な姿を見て強く
もとよりかりそめの旅人である私に明快に言えることなど
ちなみに版画用和紙とあるのは、生前東京学芸大学で版画
↓ 635「何処へ」
(41.5×28.4㎝ 2012~2013年 台紙に 和紙/アクリル・コラージュ・彩墨)
(41.5×28.4㎝ 2012~2013年 台紙に

これは私の中でも位置づけ、意味付けの難しい、類例のな い作品。(会場では額装してあるので、少し印象が違うか もしれません。)
一見してわかるように横断歩道の信号機をモチーフとして いる。
何年か前から信号機が電球式からLED式にかわり、歩く 男の図像が「青(緑)地に白」から「黒地に緑(のドット )」と変わった。
変わり始めの頃で、場所によって従来のものと新型のもの と混在していた時期であり、その変化に気づかず、妙な違 和感をしばらく感じていた。調べて見たらちょうど切り替 えの最中だと知って、安堵したのであるが、『1Q84』 (村上春樹)の中の「二つの月」のような不思議さであっ た。
そうしたことから連想したもろもろの「我々はどこからき たのか。(中略)我々はどこへ行くのか。」(P.ゴーギ ャン)、「われわれは遠くから来た。そして遠くまで行く のだ。」(白戸三平/忍者武芸帖)に通底する感覚をごく あっさり描いたもの。
*上の一文を書いた後で知ったのですが、忍者武芸帖のそ れは、イタリア共産党のパルミロ・トリアッティ(189 3-1964)の言葉だそうです。知らなかった。様々な 立場から似たような考えに到達するもんだ…。
一見してわかるように横断歩道の信号機をモチーフとして
何年か前から信号機が電球式からLED式にかわり、歩く
変わり始めの頃で、場所によって従来のものと新型のもの
そうしたことから連想したもろもろの「我々はどこからき
*上の一文を書いた後で知ったのですが、忍者武芸帖のそ
↓ 603「夜のうつわ」
(80.3×55.9㎝ 2011~2012年 台紙に 和紙、アクリル・膠彩・地の粉)
(80.3×55.9㎝ 2011~2012年 台紙に

次に紹介する604「月の器」と並行して制作。共に既発
この作品はギリシャのサントリーニ島の考古学博物館あた
造形的要素はかなりシンプル。水性絵具(膠彩・アクリル
参考までに。
↓ 604「月の器」
(80.3×55.9㎝ 2011~2012年 台紙に 和紙、アクリル・膠彩・地の粉)

内容的には「夜のうつわ」とほぼ同じ。中学高校の同級生のMM君が5年ほど前に買ってくれた。
古いものを見て我々が美しいと感じる、そうしたフォルム や造形性などといったものは、それを使用していた当時の 人たちにとって、どれほどの意味があったのだろうかと、 思いはめぐる。
古いものを見て我々が美しいと感じる、そうしたフォルム
↓ 696「装飾(ひびきと光)」
(71.3×52㎝ 2016年 台紙に和紙/揉み紙、
一連の「装飾」自体をテーマ(?)にしたものの一つ。
装飾は常に二次的なものとして在った。何物かのための存
だが私は装飾それ自体を描いてみたかった。ゆえにそこに
この作品も、自分としては比較的珍しく、割と楽しく描け