何かと忙しい。いや、家事・雑事・細事・俗事はさておき、制作に忙しいのである。
先日の西荻窪数寄和での個展の作品を順次「秌韻―外覧会」と称して順次上げていこうと思っているのだが、その余裕がない。
それはそれとして、その時の個展で、ある作品を見た若いミュージシャンの近藤君が『放浪者』という歌を作ってくれた。10日ほど前に彼のFB にアップしていて、すぐにでもシェアしようと思ったのだが、その元になった作品『祝人(ほいと)』の画像の扱いというか、適切なコメントを書くのが面倒で、ついつい今日に至ってしまった。
しかし歌も投稿も生もの。まずは投稿してみよう。
それにしても、私の絵にインスパイアされて歌を創る人がいるなどとは、想像したこともなかった。考えてみれば、ほとんどありえないことだ。うれしい限り、ありがたい限りである。その絵の世界観(みたいなもの)にもちゃんと共感してもらえている。
近ちゃん、ありがとう!!
「祝人(ほいと)」
(F6号 2015~2019年 自製キャンバスに樹脂テンペラ・油彩)
先に投稿した「放浪者」の元になった作品である。
中世ヨーロッパ(おそらくドイツあたり?)の図像。癩病(ハンセン氏病)患者のイメージである。別口でヘビメタあたりのシーンに時々出てくるペスト患者(を治療する医者=ゴーグル付きの鳥頭状のマスク)のイメージを調べているうちに引っかかった画像が元になっている。
「祝い人(ほいと)」とは「乞食」の方言、というよりも、今に残る古語の一つ。「ほかいひと」「ほぎひと→ほぎと→ほいと」。
この「ほぐ」は「新春を寿(ことほ)ぐ」の「ほぐ」である。神道には「祝事」(ほぎごと)、祝詞(ほぎこと)、祝酒(ほぎさけ?)などがある。祝詞を述べる人「祝人」(ほぎひと又はほぎと)から転訛して「ほいと」となったという。ちなみに「祝」を「ほ」「ほう」と読ませる地名も全国に何か所かある。
そもそも私の故郷周辺(だけとは限らないようだが)で「ほいと」の意味する「乞食」の語自体が、本来は僧の「托鉢」のことなのである。
つまりこのタイトルと作品は、私の世界観における基本コンセプトの一つである「一致する不一致」=」「聖と賤の一致」ということに基づいているのである。
ちなみにこの作品は内容的のも上記のようなものであるし、売れるはずも受けるないしと思って、出品する気はなかったのだが、絵を見に来たKさんから勧められて、今回出品する気になった。むろん売れはしないが、案外評判が良い(面白がられた。興味を持たれた。)まあ、私の作品にしては、やや異風だということもあるだろうが、それはそれで悪い気はしない。