艸砦庵だより

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閑話+石仏探訪35「ワクチン接種と里山春日幻想」(記・FB投稿:2022.3.6)

 3月5日、三回目のワクチン接種。

 高尾橋から見ると、多くの釣り人がいる。そうか、山女魚の解禁日か。昼過ぎでこれだから、朝はもっとたくさんいたのだろう。釣りは、自分からはあまりしないけど、好きは好きだ。でも、こんなに人が多い所では御免です。

 

 ↓ 高尾橋の上から。

 釣りをするなら、山登りをするなら、人っ子一人いないところがよい。

 

 

 ワクチン接種を終えて、せっかくだから、ついでにウォーキングと石仏探訪と裏山歩きを兼ねて歩く。

 ところどころに梅の花が咲いている。やはり、庭や公園に観賞用に植えてあるのよりも、生活の一環(梅干用)として畑の際などに植えられているのを見る方が、趣が深い。

 

 ↓ 畑の端っこに植えられた一本の梅の樹。

 花より実。それゆえの花。これまでどれだけ多くの梅の実を提供してきたのだろう。

 

 

 ↓ 小さな谷間の小さな集落の、とある一軒の裏。

 表は小さな山の尾根に面し、裏もまた沢をはさんで、小さな尾根に迫られている。

 

 

 何度目かの開光院、楞厳寺・薬師堂瑠璃閣、五社大明神と、初めて見る開光院大聖殿。二度目、三度目であっても、小さな発見がある。五社大明神の「不動尊北極大元尊皇」と大聖殿の不動明王三尊は関係があるのか。今後の課題だ。

 

 

 ↓ 今はなき楞厳寺の跡に残る薬師堂瑠璃閣。

 薬師如来は東方浄瑠璃世界(瑠璃光浄土とも言う)におられるから、瑠璃閣。医薬の仏として、如来には珍しく現世利益信仰を集めたというから、廃寺後も人々の支持を得て、この堂だけは残ったのだろうか。

 中には木造十二神将などがあるとのことだが、暗く、ほとんど見えない。

 隣接して小さな墓地があり、馬頭観音などもあった。

 

 

 ↓  薬師堂瑠璃閣の前に立ち、ふと足元を見ると、不思議な穴ぼこが並んでいる。少し考えて、それが雨だれが穿った跡だと気づいて、少し感動した。

 石材は近くで産出される伊奈石(凝灰質砂岩)。やわらかく加工しやすい石だが、その分風化浸食には弱い。それにしても、こんなになるまでに、どれぐらいの年月を要したのだろうか。年月もまた、表現者である。

 

 

 五日市入野から樽へ向かうささやかな峠路。紅梅と廃車。

 

 ↓ 小さな峠路を越えれば、小さな樽集落。ここにも梅の花が咲きはじめていた。緑浅い、渋い早春の色調の中にあって、思わずドキッとする艶めかしさ。

 

 

 ↓ 直接の関係はないが、上掲のピンクの梅の花に対峙していたのが、この錆びて朽ち始めたジープ。田舎では、廃車に回す費用を惜しんで、畑の隅などに打ち捨てられるものもよく見かける。生と死。時節柄、何となく、ウクライナ等の戦場の景を連想してしまった。彼の地に平和あれ。

 

 

 道々、とりとめもなく、絵やウクライナのことなどを考える。今日見た地蔵や観音と対話する。

 

 ↓ とりとめもなく思い浮かぶあれこれを、今日初めて見た、夏の間は藪に埋もれて覆われて気づかなかったお地蔵さんに聞いてみた。

 「そんなこと言われても、仏教徒でもない人間のやることやさかい、どうにもならしまへんなぁ。そもそも、このわてかて、見ての通り、すっかり無縁仏として何の供養もされず、藪に覆われたまんま、うっちゃられてるだけやさかいになぁ~」と少々、ご機嫌ななめの態。

 

 

 ↓ それを聞いていた馬頭観音のオバぁちゃんは、

 「まあ、あんた、そんなこと言わんで、私らでなんとか少しでも情況が良くなるように、お祈りしまひょ。」、「あんた、この地蔵爺さん、ちょっと偏屈でガンコやけど、根は悪い人やおまへんさかい、気ィ悪うせんといてな。」と、私に向かって腰をかがめて合掌されたのであった。私もあわてて、合掌し返した。

(以上、春の幻想)

 

 

 2時間半は歩き過ぎか。股関節とその周辺が痛む。

 昨夜から今日にかけては、副反応というやつだろう、左手が重く、痛い。

 春は春。春日幻想。

(記・FB投稿:2022.3.6)