(ロシアのウクライナ侵攻という事態のさなかに、こんな投稿をしてよいものかとも思う。だが、ミャンマー、シリア、アフガニスタンやイエメンと、常にどこかで紛争や戦争が常態なのがこの世界だ。
「紅旗征戎吾が事に非ず」を、前後の文脈もわきまえず、芸術家の免罪符と錯覚していた馬鹿で若かった頃の私。今は違うと言いたいところだが、無力なのは同じ。やるべきことは、日々の制作と、社会・世界へ向けてささやかに開いた、例えば投稿と言う小さな窓を閉ざさないことだろう。)
↓ 緊急追加-1 ウクライナの紙幣。
こうしてみると、常に大国間で翻弄されたウクライナの歴史が透けて見える。
↑ 左上段:1918年 p.6a(その国の紙幣の発行順を示す番号。以下同じ) 50K紙幣
ロシア革命の影響を受けて、1922年にソ連に加盟するまでの激しい内戦時代=第一次独立時のもの。経緯は複雑すぎてよくわからない。
右上段:1942年p.51 5K紙幣
第二次世界大戦、ドイツ占領下のもの。これも詳しくは知らない。
左中段:1990年 ソ連ウクライナ農場代用紙幣(クーポン?)
ソ連崩壊が1991年12月25日だが、それ以前に各地の経済が不順になっていたことに対する臨時措置として一地域で使用されていたクーポン券。クーポン券だが、代用紙幣として扱われる場合もある。
右中段:1991年 p.811K臨時紙幣(?)
1991年のソ連崩壊=第二次独立時に最初に発行された少額紙幣。臨時紙幣(?)というのは、通貨であることを保証する財務大臣等の署名や通し番号などがなく、あくまで臨時措置としての発行だということ。
下段:1992(1996)年 p.105c
独立から少し落ち着いてから発行された、財務大臣等の署名や通し番号などが裏面に印刷された、最初の正式なシリーズ(だと思う)。1992年と印刷されているが、実際に使用されたのは1996年になってから。
以上、かつてコレクションしていたものの一部だが、現在では海外紙幣に興味を失い、多くのことを忘れ、詳しいことはよくわからない。
以下、本題。
「二人」ということで括ってみた。
「二人」には恋人、夫婦、友人、親子、兄弟姉妹、男女、老若、友好・敵対、等々、いくつかの組み合わせがある。「自分の中の他者」とか、「ドッペルゲンガー」や「二重人格」も二人か。「アバター」や「シャム双生児」もある。
一人は「個」。三人は「社会」。では二人はというと、「関係」ということか。「愛」や、なにがしかの複合感情が、その関係の彩合いをなす。
まあ、そうした考察は別としても、二人というのは造形的な面でも、シンプルだが、描いてみると案外面白いモチーフ、構成要素だ。などと考えていたわけでもないが、振り返れば、いつの間にかけっこう数多くの「二人」を描いている。
そうした二十点ほどの中から、女房に7点ほど選んでもらった。単なる好みだそうだ。
どれも、何かある思考や思想を表そうとしたというようなものではない。ほぼ全てイメージにのみ立脚しているので、解説やコメントのしようのないものばかりだが、仕方がない。制作順に並べてみた。
以下、「小ペン画ギャラリー」
↓ 199. 「不自由」
2020.1.27-31 13.6×12㎝ 和紙に膠、ペン・インク・アクリル *発表済
あいちトリエンナーレによってクローズアップされた「表現の不自由」に触発されたものではないと思うが、経緯は忘れた。おそらく、そのさらに基層にある、普遍的で人間的な関係性の「不自由」を描こうとしたもののように思う。
↓ 206. 「まるやかであろうとして」
2020.2.4-9 11.7×8.8㎝ インド紙にペン・インク・水彩・色鉛筆 *発表済
絵柄的には円形の中の二人の人物だから、双体道祖神からの影響もあったのかと思うが、似ても似つかぬものになっているし、意味としては全く無い。
↓ 246. 「ぬばたまの」
2020.3.26-28 12.3×8.9㎝ 画仙紙にドーサ、ペン・インク・水彩
「ぬばたま(射干玉)」とは「黒」、「夜」、「髪」、「月」、「夢」などにかかる枕詞。上方で横になって浮いている女性の長い髪から発想したタイトル。タイトルが後だから、作者の意図云々というよりも、見る人の受け取り方にゆだねられた画面世界(男女の関係性)である。
↓ 282. 「顕れた彼女」
2020.5.15-17 8.5×5.8㎝ 雑紙にペン・インク・水彩
マジカルな少女? 思春期の少女が持つ魔術性への戸惑い?
「驚き」ということを描こうとしたのかもしれないが、それ以上は私もわからない。
↓ 337 「双身態」
2020.8.19-22 14.9×9.7㎝ 杉皮紙にドーサ、ペン・インク・水彩
この絵について、せいぜい言えるのは、心理的・寓意的な絵だということ。
シャム双生児などの先天性の奇形を、その造形的な面白さなどといった文脈で、安易にモチーフとすべきではないと承知しているが、フォルムとしての魅力は確かにある。この絵はそれを意図したものではないが、結果として似た形になっているので、弁解じみるのを承知で、付記しておく。
↓ 357 「汀の二人」
2020.9.22-24 14.7×10㎝ 和紙風ハガキにドーサ、ペン・インク・水彩
この場合の「汀(水際)」は冥界の泉のほとりかもしれないし、三途の川やアケローン川の岸辺かもしれない。奪衣婆と懸衣翁ではなく、しめやかに佇む二人の女性の正体を、私は知らない。
↓ 512. 「水晶を食べる二人」
2021.8.19-21 10.5×15㎝ 葉書にペン・インク・水彩
関係性の不明な男女の晩餐。かたやナイフとフォークを持ち、一方は箸を持ち、盛られた大きな水晶を食べようとしている。夜が少し垂れ下がってきて、侵入し始めている。それ以上の解説は不能。
↓ 緊急追加-2
昨年今ごろにも雛祭りがらみで投稿したと思うが、旧ソ連時代の構成共和国ウクライナの民族衣装のお土産人形。丸木俊のアトリエにも同じものが飾ってあった。正面は色褪せているが、ピンクを基調とした魅力的なお姉さん。心なしか、眼差しが厳しい。
(記・FB投稿:2022.3.3)