艸砦庵だより

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山歩記「緑に染まる樹林の山旅 雨呼山(あまよばりやま)」(2022.5.18)

 昨年10月に続いて山形への旅。旧友I宅滞在、美術談義、石仏探訪、etc。その一日、天童市の雨呼山905.5mに登った。

 

 天童駅から晶林寺までタクシー。晶林寺の石仏を少し見て、奈良沢不動尊へ。

 

 ↓ 奈良沢不動尊の拝殿(?)と、左が峰越の滝。

 

 

 奈良沢不動尊からは峰越の滝のそばを登り、三石コースに乗る。峰越の滝を流れ落ちる水流は、尾根の向こう側の沢から人工的な水路によって、尾根を乗越して奈良沢方面に引かれているようだ。何か、そういう歴史があるらしい。

 

 ↓ 三石コースは楢の木の樹林帯の尾根。

 

 

 三石コースは、ゆるやかで快適な登り。新緑というにはやや濃いが、全ルートを通して全身が緑に染まりそうな樹林帯。展望はほとんど効かない。変化には乏しいが、こうした味わいもたまには捨てがたい。

 

 ↓ 途中で見かけた「連理木」。隣り合った枝同士、あるいは隣り合った別種の木が風に揺られるなどして、癒着接合しこういう状態になったものを時々見ることがある。縁結び、夫婦和合の象徴として吉兆と見なされ、信仰の対象とされることもある。

 

 

 ↓ 振り返る見る残雪豊富な月山。9合目までは行ったことがあるが、頂上にはまだ立ったことがない。「雲の峰いくつ崩れて月の山」

 

 ↓ 頂上近くの林相。楢類に山毛欅が混じりはじめる。緑で心身が染まる。

 

 ↓ 頂上近くの龍神の池。単なる二三の窪地で、今回はほとんど水がなかった。左奥に水神か龍神の石祠があった。

 

 

 竜神の池を見て、左から尾根を合わせた少し先の広い台地状を過ぎた先が、雨呼山山頂。橅林の一画。単独行者が一人来て、珍しく山頂での記念写真を撮ってもらった。

 

 ↓ 雨呼山山頂905.5m。山毛欅林。展望ゼロ。静寂。

 

 ↓ 人っ子一人いない山頂だったが、単独行者がやってきて、写真をとってくれた。今回唯一の記念写真。そのお腹、もうちょい引っ込みませんか。

 

 

 少憩後、山頂近くにある謎の凹地「ジャガラモガラ」に下る。その上端を通過しただけで、全容を見たとは言えないが、麓の奈良沢「不動尊」、頂上近くの「龍神の池」、山名の「雨呼山」、「ジャガラモガラ」にある「村雲の池」と、要するにここはワンセットで雨乞いの山なのだ。丹沢の阿夫利山(大山)や各地にある雨乞山と同じ機能を担っていたのだ。「雨呼山(あまよばりやま)」という山名は素直だ。

 

 ↓ ジャガラモガラの上部。二輪草の群落。緑と光。

 

 ↓ ジャガラモガラの上部にある村雲の池。やはりほとんど水はない。傍らになにやらゆかしそうな石碑があった。解読はこれから。

 

 

 ジャガラモガラについては、20年以上前に新聞で知った。標高の高い所から冷気が入り込み、低地で吹き出すため、温度や植物の巣直分布が逆転する不思議な場所だとして知られていたという。その語源には諸説あるが、地元の龍神伝説のサンスクリット語の「シャガラ竜王」由来説とか、姥捨て伝説由来など、なかなか興味深い。

 

 藪っぽく、ルート不明瞭とされていた鵜沢山730.6m、三角山634mをへて若松観音へのルートに行くかどうかは、時間のこともあり少し迷ったが、未舗装の林道が現れたところで、右への道標のあるしっかりした路をみつけ、それを辿ることにした。特に問題はなかった。

 鵜沢山も三角山もさほど魅力あるものではなかったが、それはまあ、しかたがない。唯一度見えた分水嶺奥羽山脈の山々が魅力的だ。1か所、新しいものではないが、大きな熊の糞があった。

 

 ↓ 下山途中に珍しく展望のきくところがあった。奥羽山脈の黒伏山1226.8mと、東北を代表する岩壁であるその南壁。その左のピークは白森1263mと長谷山1127.1mか。

 

 

 辿り着いた若松観音堂をはじめ、その旧参道入口や、集落ごとに点在する石仏や小堂、寺社などに気を惹かれながらも、時間的余裕はなく、最後は急ぎ足で、なんとか数少ない電車に間に合った。

 

 

 ↓ 若松観音堂旧参道入口の近くの山神社。「山神社」碑の裏に「昭和二年十月敷地取得 發願主 氏家俊田 建設者 若松區民」とある。

 

 

 ↓ 山神社の御神体。朽ち果てかけつつある仏(あるいは神)像、あるいは単なる変わった形の木の瘤のようにも見えるが…。傍らの札には「明治二十五年 奉再建山神■~」とある。

 

 

 ↓ 山元 若松集落の「地蔵大菩薩」と記された小堂。手前には十八夜塔、正観音、出羽三山供養塔のいずれも自然石の文字塔がある。

 

 ↓ 地蔵堂にあった本尊の、朽ち果てつつある地蔵。

 頭部は失われているが、よく見れば宝珠錫杖姿の丸彫立像だったということが見てとれる。御堂そのものや、他の石仏なども置かれた現状を見ると、今なお人々の信仰対象として生きている様子が、ゆかしく想像された。

 

 

 雨呼山は山寺・立石寺からの修験の道だという。それはその先、どういうルートで、どこへ通じていたのか。気になるところだ。

 今回の標高差は855m。この程度の山であれば、まだしばらくは登れそうだ。さて、次はどの山に登ろうか。

 

【コースタイム】晶林寺9:35~奈良沢不動尊~三石コース~展望コースとの分岐11:15~ジャガラモガラ分岐12:02~雨呼山山頂12:55/13:20~ジャガラモガラ~林道右の尾根への分岐14:20~鵜沢山15:03~三角山15:40~若松寺16:15/25~天童駅18:00

(記:2022.5.23 6.17)