艸砦庵だより

河村正之のページ 絵画・美術、本、山、旅、etc・・・

小ペン画ギャラリー-25 「1~3月の近作から」

 別に月一と決めているわけではないが、中一ヶ月空くと、自分の作品(ペン画)をPCやスマホの画面上で見たくなる。半ばルーティンと化した「小ペン画ギャラリー」の投稿。

 今年に入ってからの小ペン画制作点数は、1月が15点、2月7点、3月18点、4月2点。2月前後は大きい作品の制作に集中したり、また別の新作に取りかかったり、4月は旅で、点数は伸びない。現在タブローの方は、一進一退の膠着状態。つまり普通。両者は必ずしも両立しない。

 

 今回の6点は単純に近作、今年に入ってからのものの中から適当に選んだもの。特に括りなどはない。すべて未発表。制作順。

 

 

 ↓ 546 「供物を運ぶをみな」

 2022.1.10-11 19.3×14.1㎝ アルシュ紙に水彩・ペン・インク

 

 最近読んだ民俗学関係の本の中に、頭の上に荷を載せて運ぶ頭上運搬ということが出ていた。イメージとしてはアフリカやアジアの発展途上国など、日本なら沖縄や離島、せいぜい昔の漁村といったところだが、案外全国的に分布していたようで、少し驚いた。

 関係ないけど、海女・海士の分布についても同様で、つい最近(50年ぐらい前)のことでも知らないことが多いことに驚く。

 その本をもう一度読み直したいと思ったのだが、さて、どの本に載っていたのか、見つからない。ともあれ、その記事の内容とは直接関係はないが、それをきっかけとして、こんな絵を描いた。

 

 

 ↓ 547 「ある楽曲への感謝」

 2022.1.17-20 19.2×14.5㎝ アルシュ紙特厚に水彩・ペン・インク

 

 第二次世界大戦独ソ戦で最大の激戦の一つ、レニングラード(現サンクトペテルブルク)包囲戦をめぐる、ショスタコビッチの代表作「交響曲第7番」を扱ったドキュメンタリーを見た。

 芸術とプロバガンダ(情報戦・宣伝戦、またそれを担った作品)。作品が生成する社会や時代といった、情況と文脈。現在のロシアのウクライナ侵攻と重ね合わせて見るとき、なんとも複雑な位相である。交響曲第7番が優れた楽曲であるかどうかは、私には判断しかねるけれども。

 音楽を絵にするのは難しい。

 

 

 ↓ 551 「夜のまろうど」

 2022.1.24-26 20.6×16.2㎝ ワトソン紙に水彩・ペン・インク

 

 「まろうど」を漢字で書けば「客人」。客人と書いて「まれびと」と読むこともある。

 昔、漫画誌ガロで描いていた鈴木翁二に「宵のまろうど」という作品があった。むろん本作とは関係ない。どちらかと言えばつげ義春の方が近いかも。

 

 

 ↓ 561 「沼沢地の人」

 2022.2.14-16 19.3×14.3㎝ アルシュ紙に水彩・ペン・インク・カラーインク

 

 あまり強いインパクトではないが、直接のきっかけとなったのは、ある映画(『マッドマックス 怒りのデスロード』)の一シーン。

 その前提には、ボッシュや北方ルネッサンスあたりの、綺想の人物表現や悪魔・化け物などの絵などがある。別に中国の『山海経』経由の『和漢三才図絵』などにある、「手長足長」を描いてみたいという気が前からあった。これは「手長足長」ではないが、まあ、同根の発想。竹馬や各地の民俗的シーンにしばしば見られる異相的在りようの一つでもある。

 

 

 ↓ 567 「急ぐ人」

 2022.3.2-7 15.4×12.4㎝ 洋紙に水彩・ペン・インク

 

 この作品の直接のきっかけになったイメージや映像といったものはなく、また、作者からのメッセージや意味といったものもない。

 全くの想像力だけで描いたのだが、結果として、何とはなしの寓意性が匂い立つ。イメージには、時おりそうした不思議な自律的働きを示すことがある。この作品に限らず、今回紹介する6点には、そうした感じが多かれ少なかれあるように思われる。

 

 

 ↓ 569 「転生」

 2022.3.4-7 14.4×19.1㎝ アルシュ紙特厚に水彩・ペン・インク

 

 転生という画題は、学生時代の師であったT先生が時おり扱われたものだった。

 輪廻転生、永劫回帰、リインカーネーション。文学や美術、芸術の世界ではなじみ深いイメージ/世界観である。私は直接的な生まれ変わりなどは信じる気にもならないが、分子レベルでは、永劫回帰は常態であろう。

 本作はもちろんそんなことを考えたわけではないが、ごくスッと出てきたもの。たぶんこれ以上の奥行きは持たないだろう。

 

 

(記・FB投稿:2022.5.10)