艸砦庵だより

河村正之のページ 絵画・美術、本、山、旅、etc・・・

石仏探訪-49 余録‐「檜原村でカモシカに会った」

 少し前、11月4日の昼過ぎ、思い立ってバスに乗って檜原村へ行った。

 南谷の人里や笛吹は何度も通過しているが、石仏探訪を目的として行ったことはない。ちなみに人里は「へんぽり」、笛吹は「うずひき」と読み、柳田国男を悩ませて以来の有名な難読地名。朝鮮語由来説やらいくつかの解釈があるが、さて解決されたのだろうか。

 

 中途半端な時間なので、山登りをする余裕はない。笛吹で幸先よく石仏群を見つけ、上平五社神社で裏山歩きをさせられた。降り立った上平の林道でカモシカの親子に出会い、また写真には撮れなかったが、猿の群に3回も出会った。檜原村の野生動物率は高い。

 

 日が暮れるのは早い。数少ないバスの時間を気にしながら、事貫、和田を急ぎ足で探訪しつつ、暗くなるころ上川乗バス停に着いた。途中、猿に出会い、法面に押しやられたいくつかの石仏を見た。

 都民の森からの急行バスがあるということを知らなくて、少々時刻表に翻弄されたが、結果的にはスムーズに五日市駅に帰れた。半日足らずのささやかな旅。

 

 

 ↓ 笛吹集落入口石仏群

 

 バス停からすぐの集落の入り口にあった石仏群。風情はあるが、逆光になって、うまく写せない。

 文字塔、像塔、十数基あり、なかなか面白いものもある。

 

 

 ↓ 石仏群の中心に置かれた絵馬型の一石六地蔵。文化11/1814年。

 

 六地蔵ではあるが、中心には少し大きな主尊が加わっていて、七地蔵。

こうした絵馬型の一石六地蔵は隣の山梨県東部に多く、檜原村縄文時代以来甲州から人が移り住んできた歴史を反映している。檜原からさらに先のあきる野市にも数は少ないが、こうしたタイプのものがいくつか残っている。

 

 ↓ 参考

 

 6年前、甲府市の鹿穴から深草観音、大経蔵寺山に登りに行った時に、途中の下積翠寺町の路傍で見かけたもの。ここ以外、また一石六地蔵以外にもいろいろな石仏が数多くあったが、その頃は興味がなく、ただ漫然と面白いなと思いつつ通り過ぎていった。

 

 

 ↓ 手回し式サイレン

 

 石仏群の向かいにはこのサイレン(?)があった。防災、消防用のものだと思うが、もう生きてはいないだろう。集落に火の見櫓と半鐘は見かけることは多いが、サイレンはあまり見かけない。早くに撤去されることが多いのだろうか。

 人工物ではあっても、その役割を終え、錆びて朽ちいくままに放置されていると、もはや自然と同化している風情である。

 

 

 ↓ 紅葉

 

 集落全体が山腹にあるため、どこを歩いても坂道。常緑針葉樹の植林が多い中で、振り返れば一本の欅(?)の色づきに秋の深まりを見出す。

 

 

 ↓ 秋海棠

 

 石垣に見たことのない珍しい花が咲いていると思ったら、花びらの落ちた秋海棠だった。ピンクの花びらのように見えるのは萼(ガク)で、葉柄までピンクだったのだ。

あまりまじまじと見たことがなかったのでちょっと調べて見たら、雌雄異花同株とやらで、どうやらこれは下向きに咲く雌花らしい。知らないことだらけ。

 

 

 ↓ 人里集落遠望

 

 人里の上平にある五社神社に向かう。裏山歩き程度は登らされる。見返れば人里の集落が静かにたたずんでいる。

 

 

 ↓ 念三夜塔

 

 参道途中にあった。資料では「念は廿の代わりである」(つまり二十三夜塔)としている。その根拠はよくわからない。『続日本石仏図典』では長野・岐阜に見られ、月待か踊念仏系か不明としている。これはどう系統のものなのだろう。嘉永4/1851年だからそう古いものではなく、地元の人にでも聞いてみたいが、その地元との人とは会わずじまい。いずれにしても珍しいもの。

 

 

 ↓ カモシカその1

 

 五社神社裏参道(?)の林道を歩いていたら、久しぶりにカモシカの親子に出会った。ちょっとわかりづらいが、二頭が重なっている。ほぼ同じ大きさで、どちらが親か子かわからない。

 

 

 ↓ カモシカその2

 

 手前の一頭はすぐに駆け去った。もう一頭は不思議そうにじっとこちらを見ている。おどかさなければそう簡単には逃げない。

 

 

 ↓ カモシカその3

 

 やがてこちらを見飽きたのか、ゆっくりとお尻を向けて去って行った。お尻もかわいい。これまで見たものよりも色が黒いように思う。地域性なのか、季節色なのか。

 

 

 ↓ 参考:カモシカその4

 

 こちらは前回2016年の4月に笹子峠の下で出会ったもの。わりと大きく、色は薄褐色。つぶらな目がかわいい。

 

 

 ↓ 民家

 

 降り立った都道沿いの事貫か和田の民家。こうした焼杉の板壁(?)の家は少なくなっている。縁は無いけど、懐かしみは覚える。

 

(記・FB投稿:2022.11.14)