艸砦庵だより

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旧作遠望‐3 「大作について‐偶感」

 5,6年越しだった実家の墓仕舞いを終え、近くに購入した墓地にようやく改葬(納骨)を済ませ、ホッとしている。 

 そのことと関係があるような無いような話だが、現在二ヶ所借りている作品保管場所を清算して、新たに最終(?)保管場所としての作品倉庫(土地を購入するか?借りるか?して、そこに倉庫を新たに建てる)の案件が進行中。

 自分の作品が残ろうと残るまいと、歴史的な観点からしてもあまり関心はないが、実際問題としての作品の処分(廃棄)や、今後20年程度の保管に関してはやはり自分の責任の範疇だろうと思う。

 撮影したフィルムも劣化するし、デジタル画像や、それを収めたMDやCDなども気がつけばソフトが古くなって(?)読み取れなくなったものもある。いずれにしても、モノは滅ぶ。

であるがゆえに、今ある作品画像をアップして見るのも、意味なしとしない。今回は「大作」ということに少しこだわって、300号を2点(+1参考画像)。

 

 大作とは何号以上かというのは人によって違うだろうが、私の場合、一枚で独立したタブローとしては300号=291×218.2㎝が最大。20代後半、まだ学生だった頃、当時の先生に言われた。「その時、その場で可能な最大の大きさの作品(大画面)を描きなさい」。この言葉は重く響いた。絵は理屈ではない。

 生まれた初めてのF300号を、それも2点ほぼ同時に描き進めた。その内の1点は、一応描き上げたつもりで、撮影までしたものの甘い出来。それを見透かされたように、厳しい批評の言葉をいただいた。腹も立ったが、奮起してあらためて描き進めた結果、腑に落ちる地点まで行けた。

1点は数年後に、とある公共施設に納められ、もう1点は自宅の収蔵室に入れたままなので、実際に見ることは難しい。こうして画像データとして見るだけである。

 

 

T.32 「まなざしの中で‐1」

 1982~1983年 300F(291×218.2㎝) 自製キャンバス(麻布にエマルジョン地)に樹脂テンペラ・油彩

 

 (*当時の撮影者の技術的未熟さのせいで、画面の水平垂直性が正確に撮影されていません)

 

 

*参考 「まなざしの中で-1」途中経過

 

 この状態で完成としていたら、その後の制作態度といったものが、今とはだいぶ違ったものになっていただろうと予想できる。そういった意味では厳しくも、身になった指導であった。

 

 

T.33 「まなざしの中で‐2」

 1982~1983年 300F(291×218.2㎝) 自製キャンバス(麻布にエマルジョン地)に樹脂テンペラ・油彩

 

 少し遅れて描き始めたこちらの方は、苦闘する「-1」のおかげ(?)で、比較的スムーズにいった。大画面というものが理解でき、自分のフィールドとすることができるようになった。

 本作は何年か後に某市の文化会館に納められた。後にその市は合併して、施設としては現在も存続しているが、本作の現状は不明。

(記・FB投稿:2022.11.11)