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艸砦庵だより

河村正之のページ 絵画・美術、本、山、旅、etc・・・

冬至の日(12月22日)に陣馬山に登った.

 今年も残り少なくなってきた。年内にもう一度どこかに登ろうと思った。天気予報を勘案して12月22日にする。ふと見れば冬至とある。一年で昼が最も短く夜が最も長い日。この日を境に昼が長くなる。つまり再生復活の日。そう言えば今は25日と決まっているクリスマスも、本来はキリスト教導入以前から祀られていたケルトドルイド教冬至の日であったというのをどこかで聞いたことがある。夏至冬至春分秋分。かくて世界はめぐる。などといったことと今回の山行は関係ないが、冬はやはり寒いし、日は短いしで、自ずと近場の比較的短いルートになる。雪山でラッセルに明け暮れたのは遠い昔の話。

 ミシュランの☆☆☆効果で登山者が殺到している高尾山に興味はないが、やはりその近さは魅力で、☆☆☆認定以前に北高尾山稜と南高尾山稜は何年か前に歩いている。山歩きとしてはあまりパッとしないというか、魅力に乏しいという印象だった。だが、その北高尾山稜を歩いた時に、入山ルートにとった余瀬から薄い踏み跡を辿って立ち寄った矢の音633mにはそこはかとない渋い魅力を感じ、その先をいつか歩いてみたいと思った。もう16年前のこと。

 もう一つこのあたりに心ひかれる理由は、以前、山書蒐集・研究に熱心だった頃に心ひかれていた高畑棟材という人物が後半生隠棲した栃谷の近くだからである。高畠棟材は『東京附近の山々』『奥秩父と其附近』(共に1931年 朋文堂)といったガイドブックのほかに『行雲とともに』(1934年 朋文堂)や『山麓通信』(1936年 昭森社)といった著作を持つ、大正から昭和初期にかけてのいわゆる静観派、低山趣味の鼓吹者の一人。その評伝としては『行く雲のごとく ―高畑棟材伝』(浅野孝一 1999年 山と渓谷社)がある。渋い、良い本である。

 静観派、低山趣味とは今の私自身にほかならない。いや、今にしてみると、結局若いころから私は本質的にそうだったのだと思えなくもない。ともあれ、結果的に陣馬山を結節点として、栃谷をめぐる矢の音の先の稜線と一ノ尾根を結ぶ陽だまりの尾根を歩くことにしたのである。

 

 藤野駅に降り立ち、10:35に歩きだす。

  ↓ 登山口近く のどかな風情

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トンネルを越え、登山口近くまで行くと、道端に一人の年配の登山者が座り込んで地元のおばさんたちと話をしている。「山の上で道がなくなって、仕方がないから下りてきた」「まっすぐに道はあるよ。そのまま行けば明王峠まで行けるよ」「いや、大沢ノ頭という標識の先で道はなくなっているんだ」との会話。ほんまかいなと思いつつ、すぐ先の登山口の標識から登り始める。日当たりの良い尾根上の畑の脇、気持の良い雑木林の中を路は登って行く。一時間足らずで大沢ノ頭と書かれた杭がある。ここかと思うが、その先も特に路がわかりにくいということもなく、5分ほどでイタドリ沢ノ頭505.8mの標識(11:50)。

  ↓ イタドリ沢ノ頭

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ここは奈良本山ともいうらしいが、特に山頂という感じはしない。三方は植林帯だが、北面だけ開けて、陣馬山から笹尾根方面が木の間越しに見える。全体を通して植林と自然林の割合は5:5ないし6:4といったところだが、やはり楢を中心とする広葉樹のあるところは気分が良い。葉はほとんど落ちて明るい。また地図には出ていないよく踏まれた路もが数多く分岐している。

  ↓ 途中から陣馬山方面をのぞむ

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  ↓ こんな感じ 陽だまりハイキングです

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 矢の音(ヤノネと読むのかヤノオトと読むのか不明)は16年振りの再訪となるが、気象観測の装置が設置されていたり、藤野15山とやらの標識があったりして、少々記憶と違う(12:40)。ここで昼食、小休止。コンビニ弁当も美味しくいただける。

  ↓ 矢の音山頂

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 明王峠への中間の鞍部には車道が上がって来ていて、3台駐車してあった。そう新しいものではないが、はて16年前にはこの車道はあったのだろうか。記憶にない。明王峠からはさすがにメインルートとあって、立派な道となり、行き交う登山者も多い。平日の昼間、こうして来ているのは時間と余裕のある(中)高年の人が多い。まあそれは悪い事ではないだろう。

 ↓ 普通は暗い植林帯だが、斜光線を受けてこんな木漏れ日の抽象模様を描くこともある。

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 陣馬山山頂着14:10。快晴の360度の大展望が素晴らしい。てっぺんには例のコンクリート製ペンキ塗り(?)のモダニズム彫刻風の白馬が建っている。ロクでもない代物と思っていたが、こうしてみると意外にも妙に雰囲気とマッチしている。人の感性などあてにならぬものだ。それよりも頂上付近には3軒の茶店があり、それぞれがベンチとテーブルを並べてスペースを主張しており、どこが山頂と言うべきスペースなのかよくわからない状態。まあ良いか。ここは一般大衆の山なのだ。しかし陣馬山でこうだったら高尾山山頂はどうなっているのだろう。やはり私が行くべき山ではないだろうと思う。

  ↓ 「陣馬」ではなく「陣場」という説もあるが、白馬です。

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 頂上滞在もそこそこに下山路の一ノ尾根を辿る。なだらかで歩きやすい路。人出も絶えて、麓まで一人も出会わぬ静かな山路を堪能した。

  ↓ 一年で最も日が短い日のやわらかな西陽と落葉

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 バス亭に至れば待つほどの事もなくやって来たバスに乗り、藤野駅へ。このあたりに来ることは、正直言ってもう無さそうであるが、今回訪れることのなかった栃谷にだけは一度行ってみたい気はある。いくつかの地図上の赤線の切れ目をつなげるためのルートは考えられるが、さて。

                         (2015.12.23記)

 コースタイム藤野駅発10:35~登山口10:55~大沢ノ頭477m11:45~イタドリ沢ノ頭(奈良本山)505.8m11:50~矢の音633m12:40~明王峠13:23~陣馬山857m14:10~落合16:50