艸砦庵だより

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「暑気払い―その2・古い沢登りの写真」

 古アルバム、古写真の整理は遅々としてはかどらない。先日FBに「暑気払い―古い山の写真」として冬山の写真をアップしたが、案外評判が良かった(?)。だが、やはり当初の目論見であった「暑気払い―古い沢登りの写真」を紹介したいという思いは、何となく強くある。

 沢登りは山登りの一分野であるが、アルパインライミングや、(自然の中での)ボルダリング、アイスクライミングなどと同様に、必ずしもその実相は世間一般(例えば私のFBお友達)には理解されていないだろう。登山と言えば百名山とか富士山とか、いきなり飛んでエベレストなどとイメージされることが多いように思う。まあ、絵も似たように「どんな絵を描いているのですか?風景画ですか?人物画ですか?抽象画ですか?」と無邪気に質問されると、返答に窮してしまうというのと、ちょっと似ている。まあ理解されなくても特に困りはしないが。

  真冬はさすがにあまり行かなかったけど(全く行かなかったわけではないが)、それ以外はほぼ沢登りが中心だった。奥多摩・奥秩父から関東・東北、たまに信州までわりと幅広く行ったが、特に新潟・福島(と書くよりもやはり越後・会津と言った方がピンとくる)が活動の中心だった。有名なところに行かなかったわけではないが、なるべく人に知られていない、記録の無い沢を探して登っていた。未知への憧憬である。

 沢を登りつめても登山道があるとは限らない。別の沢を下降するか、ヤブ漕ぎで尾根を下るか。

 30年前の写真を見ていて、もうそのように登ることはとてもできないし、したいとも思わないが、よくやってるなぁ~!!という感はある。ちなみに、当時はもう結婚していて子供もいて、アルバイト生活は苦しく、そのくせ制作・発表とガンガンやっていたのだから、まったく若いというのは素晴らしいものである。

  というわけで、沢登り、それも「かつて私がやっていた沢登り」の写真をいくつか紹介する。ちょっと「普通の沢登り」とは違うかもしれないが、多少の暑気払いにはなるだろう。

 

 

1.巻機山・米子沢(~上ゴトウジ沢下降~ブサノ裏沢) 1992.7.4~5

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 こんな感じが標準の遡行スタイル。上半身は当時出始めの新素材ウェア。下半身は作業ズボンとフェルト沢用スパッツ、フェルト足袋。ヘルメット着用。ハーネスは普通はウェストベルトのみ。ジャラ(ハーケンとかハンマーとかカラビナとか)少々。山中泊なので、背には中身完全(?)防水の大型ザック。

 米子沢は有名で人気のある沢だが、よくまとまったきれいな沢。源頭の湿原も良い。その後継続した上ゴトウジ沢とブサノ裏沢は雪が多く、ほぼ雪渓歩きに終始した。

 

 

2.下田・光来出川・白根沢右俣(~左俣下降) 1988.9.3~4

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 登っているのはSさん。だいぶ厳しそうだが、この滝は登れたのか、あるいは難しくて結局高巻したのか、覚えていない。ザイルはつけていないようだ。われわれはあまりザイルを使わなかった。でも後続は上からザイルを投げてもらったりする。それをお助け紐と言う。

 

 

3.下田・砥沢川(砥沢川本流~中ノ又沢左俣~中ノ又山1070m~吉原沢左俣下降~吉原沢右俣~五兵衛小屋~日本平) 1990.7.28~31

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 砥沢川本流の下流部のジッピを泳いで突破するAさん。ジッピとはこの地方の方言で、ゴルジュのこと。ゴルジュとはフランス語で喉(のど)のことで、沢の両岸が極端に狭まったところを言う。

 トップは空身でザイルを引いて必死で泳ぎ、後続はザックを浮袋代わりに引っ張ってもらいつつ少し泳ぐ。楽ちんである。本流以外はいずれの沢も記録を見なかった沢である。

 

 

4.下田・川内 (室谷川本流右俣~金蔵沢下降~神楽沢~中ノ又沢右俣下降~)砥沢川本流下降

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 同じくゴルジュ、トゾー(砥沢)のジッピの最狭部。3と同じ砥沢川本流だが、これは別の年に下降した時のもの。写っているのはやはりAさん。私ではとても足が届きません。

 

 

5.下田・白根沢左俣 1988.9.3~4

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 写真2の右俣を登って左俣を下降した時のもの。同じゴルジュでも、規模は小さいが、有機的な局面が連続する素晴らしい渓相で、美しい沢、楽しい山行だった。

 

 

6.奥利根本流~越後沢中間尾根下降 1991.8.14~16 

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 沢登りの対象としては大関クラスの有名渓谷。中ほどのシッケイガマワシあたりだったか、越後沢出合あたりだったか。雪渓が連続し始める。雪渓から流れ出る水はものすごく冷たい。その中を腰まで、胸まで漬かりながら、時には泳いで遡る。写真は同行のYさん。

 

 

7.川内・下田 早出川・今早出沢本流~大川東又沢下降 1991.9.21~23

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 早出川の今早出沢本流を魚返の大滝を登攀してから詰め上げ、尾根を越えて、大川東又沢を下降した時のもの。鷲ヶ沢出合付近の急流をザックの浮力を頼りに突破する。(良い子のみなさんはまねしてはいけません)

 

 

8.下田・光来出川本流 1988.8.18

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 時にはこんなお遊びも。夏合宿最終日の下山時、白根丸渕でドボンしつつ、泳ぎつつ下る。ドボンしているのが私。右に写っている、背負ったザックにに体重を乗せて浮かび泳ぐのが、「ラッコ泳ぎ」。

                              (記:2020.8.17)