11:30起床。朝昼兼用の食事を終え、食器洗いや洗濯物干しなどの家事や雑事を済ませ、アトリエに入る。とりあえずPCを立ち上げる。しばし、ぼんやり。なかなか制作に向かう気にならない。いつものことだ。
外は何年ぶりかの寒波襲来とかで、寒い。ここのところ引き籠って、ほんの少しばかりの制作と、あとはひたすらブログ書きの日々だった。
二日前の雪がまだ残っている。運動不足であるのは自覚しているが、外に出る気にもならない。そのせいか、ここ数日、左股関節の調子が微妙におかしい。ここは一つ、重い腰を上げてでも、少しウォーキングか裏山歩きでもしなければいけないだろうと思う。
何年か前の大雪の翌日、ラッセルで裏山歩きを楽しんだことがあったのを思い出した。今日の裏山にはまだ少し雪が残っているだろう。久しぶりに雪の上を歩く感覚を楽しみたくなってきた。そう言えば、檜原の佛沢の滝の下段が氷結したというニュースを聞いた。金剛の滝は凍らないのだろうか。これまで聞いたことはないが、規模も小さいことだし、この寒波ではひょっとしたら凍っているかもしれない。ちょっと見にいきたくなった。
14:45、家を出る。10分ほど歩いて都立小峰公園。八坂神社から登り始める。当然雪はある。すぐに、念のため持ってきたスパッツをつける。このスパッツも30年近く前に買ったもの。とっくに耐用年数は過ぎている。最近はジッパーの具合が悪く、毎回履くのに苦労する。いいかげん、買い換えるべきだろう。
↓ 小峰公園 桜尾根
八坂神社からの桜尾根は、秋川丘陵経由の、八王子の川口川や恩方方面への古くからの生活道。馬頭観音もある。ここは五日市に来て以来、何十回となく歩いた裏山散歩のフィールドの一つ。
↓ 336mピーク直下の階段
雪はあったりなかったりで、深いところでもせいぜいくるぶしの上、吹き溜まりでスネ程度。物好きな人もいるらしく、踏み跡はそれなりにある。ほどなく336mの三角点のあるピークに立つ。わが家の標高が200m弱だから、標高差は130mといったところ。名前は特にないようだ。「かたらいの路 秋川丘陵コース」の看板がある。
↓ 336mピーク頂上 左下が三角点の保護石
↓ こんな感じ
その先もなだらかな登り降りを繰りかえす。石灰岩の露頭の先、左には大きな変電所がある。そこをすぎれば分岐点に金剛の滝への標識。
滝への路は木の階段、鉄鎖の手すりなど、最近整備され直されたようだ。いつもは人工的整備のしすぎ、などと毒づくところであるが、雪が付いていると少しありがたい。勝手なものだ。
降り立ったところは、盆堀川の支流の逆川が90度向きを変える、堰堤の上の川原。ここは吹き溜まりというか、少し雪が多く、ひざ近くまである。しかし、物好きな先行者のトレースを辿れば、問題はない。すぐに両岸は狭まり、ゴルジュ状となる。その奥に小さな下段の滝が見える。凍っていない。残念。
↓ ゴルジュ状に狭まった先に下段の滝が見える
↓ 金剛の滝 下段 見えにくいが、右の岩に黒くあるのが上段へと続く穴
伏流から水流が現れ、狭ばまった沢の右岸沿いから左岸に渡渉すれば小さな釜。夏には数匹だけ棲息している岩魚の姿も見えない。右に穿たれた小さな階段のトンネルをくぐりぬければ、上段の8mほどの滝の釜の縁に立つ。やはり凍結していない。多少水流は細くなっているようだが、とうとうと流れおちている。
↓ 金剛の滝 上段約8m
佛沢の滝は氷結しているのに、なぜここは凍らないのだろうか。佛沢の滝は標高340m、金剛の滝は地形図には出ていないが標高250mあたり。両方とも北東向き。佛沢の滝の方がより奥まった山あいにあるにしても、この100mあまりの標高差が気温の違いとしてでてくるのだろうか。しばし考えてみる。
佛沢の滝の名は「払子」から来ている。払子とは仏教で使う毛足の長い筆のような、ハタキのようなもの(白い毛だと思っていたら、必ずしも白とは限らないようだ。また真宗では使わないとのこと)。元々はインドでは蝿や蚊などを追い払うためのもの。
↓ 払子(ネット上で拾ってきたものです。済みません)
この払子を縦にして見たときの、毛を束ねているところを滝の狭い落ち口に見立て、末広がりの毛を、下にいくほど飛沫(しぶき)をあげ、広がって流れ落ちる水流に見立てたものである。夏であればこの飛沫は水煙となって、涼気の源となる。周辺の岩に付着した飛沫は凍りやすい。小さなそれらが重なり合って、次第に氷瀑へと成長するのである。
↓ 夏の佛沢の滝(ネット上で拾ってきたものです。済みません)
↓ 氷結した佛沢の滝(ネット上で拾ってきたものです。済みません)
それに対して金剛の滝は、落ち口から下までほぼ同じ幅で、しいて言えば棒状に落下している。傾斜角度と合わせて、飛沫はあまり発生しない。したがって氷瀑へと成長できないのである。川岸でも池でも凍るのはその縁からである。つまり、岸に付着する水は凍るが、流れる水は凍らないということだ。水量の点から見ても、滝上流の集水面積からして、金剛の滝の方が少ない。にもかかわらず、金剛の滝が凍らないのは、結論として、標高や方向のせいではなく、滝そのものの形状に由来する水流の形状が理由だということだ。
ちなみに氷瀑で有名な茨城県の袋田の滝は標高150mでしかないが、写真を見てわかるように、緩傾斜で凹凸の少ないスラブ状の岩盤の表面を、幅広くサラサラと流れている。気温次第でたやすく氷結しやすい条件を備えているのである。
↓ 紅葉時期の袋田の滝(ネット上で拾ってきたものです。済みません)
↓ 氷結した袋田の滝(ネット上で拾ってきたものです。済みません)
以上が「なぜ佛沢の滝は氷結するのに、金剛の滝は凍らないのか」についての考察である。読み返すと多少ずさんな点もなくはないだろうが、いい線いっているのではないだろうか。どうでもいいことかもしれないが、そんなことを考えるのも、また山歩きの楽しみの一つではある。
そんな事を考えながら下山の途についた。広徳寺近くでは伐採の最中。事情は知らぬが、嫌な感じだ。
↓ 伐採中
2時間と20分ほどの裏山散歩終了。ふだんよりちょっと時間がかかったが、まあ一日分の運動としては充分だろう。内容的にも、今回は「登山リスト」には入れられない。それにしてもそろそろちゃんと、今年の山始めをしなければならないのであるが...。
↓ 赤線が歩いたルート 左下の線が途切れたところが金剛の滝 右上の赤線の末端がわが家
(2018.1.24)