艸砦庵だより

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小ペン画ギャラリー‐29 「近作より」

 ちょい久、二ヶ月ぶりの「小ペン画ギャラリー」。

 最近の小ペン画制作ペースは、ほとんど描かない月もあれば、10点以上描く月もある。以前より画面が少し大きくなり、1点にかかる時間も増えたが、それらはまあ現象的なこと。

 絵描きとしては本筋のタブロー制作が優先だが、実際には筆を持っている時間より、ペンを持っている時間の方が長い。

 今回も特に括りといったものはなく、「近作」。前々回が「600点」だったから、今回はその近辺のもの。少し前の作品、といっても7月の作品。

 2点にはコメントを付したが、他は純イメージ的な作品なので、特に付すべきコメントはない。鑑賞、解釈はいかようにも。

 

 

 ↓ 601 「歩行器」

 2022.7.22-26  15.8×12.4㎝ 木炭紙に水彩・ペン・インク

 

 元になったのは15~16世紀のフランドルの2点の作品。一つは20年以上前にウィーンで見たヒエロニムス・ボッシュのごく小さな作品。

 もう一つはボッシュかピーター・ブリューゲルのどちらかの、たぶん大作の一部。最近ネットで見つけたもの。現物の全体は彼の地で見たことがあるかもしれないが、記憶にない。ネットの画像も保存していない。

 そうした直接的な引用(?)を元にして制作することはあまりないが、小ペン画ではたまにやる。

 共に何らかの当時の寓意が籠められているのだろうと思うが、今ではその意味はほぼわからなくなっている、つまり意味の賞味期限・有効期限が切れているとも言えるので、その図柄に新たな意味を乗せることは可能だと考える。

 

 

 ↓ 602 「繭としての自分をどこに運ぼうというのか」

 2022.7.23-25 11.9×16㎝ 洋紙に水彩・ペン・インク

 

 

 ↓ 603 「ネムリ」

 2022.7.26-30 14.8×10.5㎝ 洋皮紙風雑紙に水彩・ペン・インク

 

 「洋皮紙」という商品名(もちろん羊皮紙ではない)の、やや滑らかな肌合いの紙に描いてみた。水彩は乗りにくいが、ペンは描きやすいが、特にどうということもなかった。

 

 

 ↓ 605 「宿神の翁が夜を往く」

 2022.7.27-30 14×19.2㎝ 水彩紙に水彩・ペン・インク

 

 中沢新一の、謎の神「シャクジ、ミシャグジ、宿神」を論じた『精霊の王』にインスパイアされた作品。

 その内容論理が学術的にどうなのかは判断がつきかねるが、いわゆる民俗学レベルでは太刀打ちできない幅広いジェットコースター的論理展開と華麗な文学性に魅了され、そこから数点の作品が生まれた。久しぶりに読書の楽しみを堪能した。

 しかし、その検証証明不可能(?)な論考は、学術、学問と言えるのだろうか。文学的エッセイとしては楽しめるし、問題ないのだが。まあ、作品とは関係ない話です。

 

 

 ↓ 606 「召命」

 2020.7.31-8.8 14×13.9㎝ アルシュ紙に水彩・ペン・インク

 

 まあ、安珍清姫みたいなものかな。いや、違う。(独り言です)

 

(記・FB投稿:2022.11.23)