艸砦庵だより

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石仏探訪-3 閑話・「石仏探訪・八王子市上川町篇」(2020.7.16)

 やらねばならぬ事は多々あるのだが、あれやこれやと、物憂い。不要不急のマイブーム、石仏探訪に(半分は運動のためでもあるが)逃避する。

 曇天だが、雨は降らないものとして、自転車で小峰トンネルを越えて隣の八王子市上川町へ。今倉神社はパスし、正福寺から川口川沿いに下流へ。福寿寺→大仙寺→戸沢馬頭観音堂→田安神社、そして網代トンネルをくぐり抜けてあきる野市に戻り、禅昌寺とその近辺、というルート。八王子市に関しての資料は一切持っていない。2.5万図に記載された寺社記号だけが頼り。

 一つ一つは小さな寺だが、濃密な緑の里山の裾に点在する濃厚な東アジア的風情。途上では予期せぬ路傍の石仏もいくつか発見した。

 資料・参考文献がないのは、かえって気が楽だが、素人単独の身としては現場での観察・研究にも限りがあり、今回はすなおな鑑賞が中心。そんな3時間半ほどの行程で印象に残った、取り上げやすいものを、いくつか紹介する。

 

  1 山百合。途中でいくつも見かけた。濃厚で妖艶な匂い。一株にたくさんの大きな花をつけ、このように支えをしてやらないとたいていは自らの重みで倒れてしまう。

画像に含まれている可能性があるもの:植物、花、木、屋外、自然

 

  2 上川町・正福寺

最初に行った小さなお寺。このあたりでは旧盆でやるせいか、多少は人が来ていた。 

画像に含まれている可能性があるもの:家、木、テーブル、屋外

 

 ↓ 3 正福寺の本堂の左右の脇に掲げられていた絵馬。眼病に御利益があるのか、「め」の絵馬が多かった。迷信?信仰?しかし、味があるなぁ~。 画像に含まれている可能性があるもの:室内

 

 ↓ 4 正福寺の入り口にあった地蔵菩薩立像、宝珠錫杖舟形光背の御尊顔。全体は割と大型で、中央で二つに割れ、また一部欠損もあるが、比較的見やすい。地蔵であれ、顔の表情を味わえるものは、案外少ない。地元のそこらへんにおられそうな顔。 

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 ↓ 5 小さな地蔵立像舟形光背。風化が激しくよくわからないが、合掌形だと思う。左にかすかに「童女」と読める。墓石だったのが、今は無縁仏。種々のしがらみを脱した可愛らしさ。 

画像に含まれている可能性があるもの:植物、草、屋外、自然

 

 ↓ 6 今熊神社への道標。右面に「今熊山大権現」左面に「従之三十六丁」とある。写真左には別の花崗岩製の道標(昭和六年)も写っている。ここに至るまでに同様のものが二つほどあった。なぜか、石の道標には心惹かれる。

 画像に含まれている可能性があるもの:立っている人、植物、木、屋外、自然

 

 ↓ 7 大仙寺の裏口(?)近くの石仏群。三界萬霊塔、如意輪観音、地蔵などのほかに、損傷が激しく正体の良くわからないものもある。左奥には木下闇に石祠。雨季のアジア。

 画像に含まれている可能性があるもの:植物、花、木、屋外、自然

 

 ↓ 8 大仙寺の石仏群の一つ。如意輪観音半跏思惟像。苔を下半身にまとい、何を思惟されておられるのやら。 

画像に含まれている可能性があるもの:植物、木、屋外、自然

 

 ↓ 9 同じく石仏群の一つ。こうなると全く正体不明。頭部は素人の後補だとわかるが、全体像は何だかわからない。まあ、これはこれで良いか。 

画像に含まれている可能性があるもの:植物、木、屋外、自然

 

 ↓ 10 大仙寺境内にあった五輪塔二基。右のは火・風輪が欠。無時間的な、良い感じだ。これぐらいのもの、一つ欲しいなぁ。

画像に含まれている可能性があるもの:植物、草、屋外、自然

 

 ↓ 11 戸沢馬頭観音堂(左奥にチラッとのぞいている)の石仏群。地蔵二体と右の角柱は道標(これも結構面白い)。左の自然石の二つは、文字が彫られているようにも見えるが読めず、正体不明。戸沢馬頭観音自体は珍しい木造のものだが、この堂の本尊だとして、簡単には見れないらしい。近くには「鎌倉古道」の新しい碑もあった。 

画像に含まれている可能性があるもの:植物、木、靴、花、屋外、自然

 

 ↓ 12 石仏群のすぐそばにあったが、草に埋もれて見落としかけた「蚕神」。蚕神は初めて見た。やはり、かつて養蚕が盛んだった所なのだ。右下には桑の葉が彫られている。やや素人くさいように思う。石の形が陽石にも見えるのは、考え過ぎか。 

画像に含まれている可能性があるもの:植物、屋外

  

 ↓ 13 これは福寿寺の下(後ろの擁壁の上が境内)の辻にあった、一応地蔵。一応というのは、基盤は何か別のもの、その上に五輪塔の水輪(?)、胴は涎掛けで見えないが何かやはり別のものの一部、頭部は丸石、といったように、四つの別々の素材を重ね合わせているように見えるからである。寺自体は再建された新しいものだが、境内には古い損傷したものも置かれていることからすると、これは地蔵として寺に認められなかったものなのだろうか。それとも辻に在るからには、もともと地蔵として在ったのだろうか。いずれにしても帽子と涎掛けを着せる地元の人の信仰心によって、今現在でも地蔵として認知され機能していると言わざるをえないのだろうか。そう見れば、多少汚れてはいるものの、可愛いと言えなくもない。

画像に含まれている可能性があるもの:植物、屋外